
SNSなどネットの普及、様々なガジェットの登場によって仕事や娯楽の中心にはデバイスが当たり前のように存在している現代。
便利さや様々な創作活動、発信、人との繋がりが気軽にできるようになり、個人が活動できる幅がかなり広がりを見せていると思います。
しかしその分、精神や身体が気づいたらヘトヘトになりやすい状況に。
さて、パソコンやスマホのしすぎで起こる症状とはなんでしょう?

そうです、肩こり。
今や若い人でも肩こりを訴える人が増えてきています。
有訴者率の上位5症状
女性
- 肩こり
- 腰痛
- 手足の関節が痛む
- 身体がだるい
- 頭痛
男性
- 腰痛
- 肩こり
- せきやたんが出る
- 鼻がつまる・鼻汁が出る
- 手足の関節が痛む
女性も男性も肩こりと腰痛が身体に対する主な悩みとなっているようです。
そこで今回は肩こりについてです。
たかが肩こり、されど肩こりです。
目次
なぜ肩がこるのか?本態性肩こりの原因について
肩こり
項頸部から僧帽筋エリアの諸筋に生じる主観的に詰まったような、こわばった感じや不快感・こり感・重苦しさや痛みにいたる症候の総称である。
そもそもなぜ肩こりは起こるのでしょうか。
まずは頭と腕の重さを確認しておきましょう。
- 頭の重さ・・約5kg(体重の8%)
- 片腕の重さ・・約4kg(体重の6%)
実は頭と腕って結構重いんです。
その重い頭や腕を、首や肩で支えているんです。
そのため、どうしても肩はこりやすい場所となっています。
肩こりには何か疾患が原因となっている「症候性肩こり」と原因がハッキリしない「本態性肩こり」があるのですが、まずは本態性肩こりから探っていきましょう。
理想的な姿勢とは
どうしても切り離せないのが「姿勢」です。
デスクワークの人に限らず、今はスマホを見るなどで姿勢が崩れやすい環境がとても多く存在します。
頭部や骨盤など体節(身体の節構造の一つ一つ)の並びのことをアライメントなんていうのですが、このアライメントが崩れることで肩こりなどの症状が起こりやすくなります。
では、理想の姿勢とは一体どういう姿勢なのでしょうか。
それは、立っている状態で背面と横からみてアライメントがキレイに整列している状態のことを言います。
背面
- 外後頭隆起(後頭部の出っ張っているところ)
- 椎骨棘突起(背骨の出っ張っているところ)
- 臀裂(お尻の割れ目)
- 両膝関節内側の中心(ヒザの内側の真ん中)
- 両内果の中心(内くるぶしの真ん中)
側面
- 耳垂(耳たぶ)
- 肩峰(肩関節の先)
- 大転子(股関節横の出っ張り)
- 膝関節前部(ヒザのお皿の後ろ)
- 外果の前方(外くるぶしのちょっと前)

背面
側面
これが理想とされる姿勢です。
このようなアライメントだと姿勢を保持するための筋肉に無理に負担をかけず、コリが発生しにくいとされています。
大切なのは、身体全体に目を向けることです。
肩こりだからといって、肩だけに目を向けていては根本的な改善にはつながりません。
悪い姿勢とは
悪い姿勢とは、猫背などで理想的なアライメントが崩れてしまっている状態です。
これは日頃の良くない姿勢、日常生活の癖などによって崩れていってしまいます。
特に座っている姿勢は崩れやすいですよね。
理想とされる座り方はこんな感じです。
しかし、現実は

モニターの位置だとか肘が浮いているだとか突っ込みどころがたくさんあるかと思いますが、パソコンをいじっている最中は気づくとこんな姿勢になっています。
あなたはどうでしょうか?
こんな姿勢になっていませんか?
約5kgもある頭をこんなに前に出していたら首の負担はすごいですよね。
作業する環境にも関係するのでここまで崩れているかはわかりませんが、デスクワークの人だと1日中これに近い状態で過ごしている方も多いのではないでしょうか。
それは肩もこるわけです。
このような良くない姿勢を取り続けると筋肉のバランスが崩れ、デフォルトの姿勢が悪い姿勢へと変化してしまいます。
本態性肩こりは悪い姿勢による筋肉のバランスの崩れが多い
日常生活の癖や、座り方、立ち方、怪我の有無などによって筋肉のバランスが崩れ姿勢が悪くなり、肩こりなどの症状が起こります。
先ほどの写真の姿勢だと、前に出た頭を支えるために首の後ろの筋肉は常に緊張状態ですし、肩も前に入ってしまっている(巻き肩)ので胸の筋肉は縮こまってしまっています。
理想的な姿勢だと筋肉はバランスよく活動し姿勢を保ちますが、悪い姿勢だとそのバランスが崩れどこかに不快な症状となって現れます。
また、その不快な症状から身体をかばうためにさらに悪い姿勢になってしまい、肩こりなどがさらに悪化する、なんていう悪循環も起こってしまいます。
精神的緊張によるもの
緊張状態が続くと筋肉がこわばることはイメージがつくと思います。
そして、意外と多いのが歯を食いしばる噛み癖がある人です。
噛み癖があるとアゴの筋肉だけでなく、首の前側の筋肉(胸鎖乳突筋)も張ってきてしまいます。
食いしばるまではいかなくても、歯と歯が閉じてしまっている状態でも同じです。
患者さんの話を聞いていると、特に仕事などで緊張状態が長く続いている人にアゴの筋肉や胸鎖乳突筋が張っている人が多くみられます。
通称、リラックスした状態だと歯と歯はくっついていません。
また、左右の噛み合わせのバランスの偏りによって肩こりや腰痛の原因になることもあるそうです。
参考元:長坂歯科 頭痛・肩こり・腰痛
専門学校の同期でもあるエステティシャンの金子さんがセルフマッサージの動画をyoutubeにアップしていました。このような感じにセルフマッサージすることも肩こりの解消につながるかと思います。
実は僕自身もパソコンで作業をしているときなど、集中しているときに上下の歯を接触する癖があることに気づきました。
肩こりは自覚していませんが、首の前側が張っているのはこのせいだったんですね。
気をつけたい症候性肩こりとは
多くの肩こりは悪い姿勢や筋肉の過緊張による本態性肩こりですが、気をつけなきゃいけない肩こりというものもあります。
それが、何かの疾患が原因となっている症候性肩こりです。
- 階段を上るなど運動したときに肩が痛む
- 手がしびれたり力が入らない
- 動かしていないのに痛む
- 症状がひどくなっている
このようなときは鍼灸やマッサージを受ける前に、まずは病院でみてもらいましょう。
では、症候性肩こりは主にどのようなものがあるのでしょうか。
椎間板ヘルニア
ヘルニアというのは、組織や臓器が本来あるべき場所からはみ出した状態のことを言います。
椎間板ヘルニアというのはその名の通り、背骨の骨と骨の間にある椎間板が本来あるべき場所からはみ出してしまっている状態です。
背骨(脊椎)は1つの骨がS字にびろーんとあるのではなく、椎骨といってブロック状の骨が1つずつ連なってできています。
その数なんと24個(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)
これに5個の仙椎がくっついてできた仙骨、3〜5個の尾椎がくっついてできた尾骨で構成されています。
1つずつが連なってできているため骨と骨が直にくっついていると、衝撃を吸収したり動いたりしたときに不都合が生じてしまいます。
しかし身体というのはうまくできているもので、骨と骨の間にクッションの役割をする軟骨が存在します。
それが椎間板です。
椎間板ヘルニアは椎間板がはみ出している場所によって症状が出るところが変わりますが、骨の中を通っている神経が圧迫されて主に手が痛くなったり、しびれが出たり、力が入りにくいなどの症状が現れます。
保存的療法(手術をしない治療法)が多いのですが、症状が強い場合は手術をする場合もあります。
頚椎症
椎間板ヘルニアでは骨と骨の間にあるクッション(椎間板)がはみ出して神経を圧迫していました。
それと良く似た疾患で頚椎症というのがあります。
椎間板ヘルニアとの違いは、頚椎症は椎間板のはみ出しではなく、骨や椎間板が加齢により変形してしまい神経を圧迫する疾患です。
こちらも基本的には保存的療法ですが、生活に支障が出るくらい症状が強い場合は手術をする場合があります。
四十肩、五十肩(肩関節周囲炎)
一般的によく使われている四十肩、五十肩というのは正確には肩関節周囲炎もしくは凍結肩と言います。
その名の通り、肩の前の方だったり後ろの方だったり、腕が痛くなることもあります。
肩関節周囲炎は主に炎症期、拘縮期、回復期の3つの期間があり、そのうち痛みは無くなっていきますがそのまま放置すると関節が硬くなってしまい日常生活でも支障をきたすことがあります。
原因はハッキリとわかっていませんが、デスクワークなどで肩の関節をあまり動かさない人に多い印象です。
もしもなってしまった場合は放置せず、しっかりと治療を受けましょう。
胸郭出口症候群
胸郭出口というのは首から胸の間にある隙間のことです。
この隙間には神経や血管が通っているのですが、なで肩や筋肉によって圧迫されるとしびれが出たり力が入りにくくなったりといった症状が現れます。
なぜ圧迫されているのか、その原因によって治療が変わってきますが運動で肩の筋肉を鍛えたり鍼などで筋肉を緩める治療をします。
また、まれに頚肋(けいろく)といって首の下の方の骨が肋骨のように少し出ている人がいます。
大きさについては個人差があり症状がない場合もありますが、しびれなどの症状があれば胸郭出口症候群の原因の1つと言われています。
内臓からの関連痛
本態性肩こりも含めここまで紹介してきたものは主に筋肉や骨による症状でしたが、内臓からも関連痛として肩に痛みが現れることがあります。
- 関連痛・・痛みが起こる原因となる場所から離れたところに感じる痛みのこと。
- 放散痛・・神経に沿って広がる痛みのこと。
内臓からの肩への関連痛として有名なのは
- 狭心症や心筋梗塞(左肩が痛む)
- 胆石(右肩が痛む)
- 肺がんのパンコースト症候群
パンコースト症候群というのは肺の先っぽ(肺尖部)にできる腫瘍が神経を圧迫することによって腕や肩に痛みが現れたり、むくみが出たりすることを言います。
このような内臓の関連痛の場合、マッサージでは良くなりません。
大抵の場合は筋肉や骨が原因となるのですが、このような肩こりも存在するので頭に入れておきましょう。
いかり肩となで肩について
本態性肩こりのところでアライメント(身体の節構造の一つ一つの並びのこと)のお話をしましたが、より肩周りに注目して見ていきましょう。
まずは、いかり肩となで肩を見ていく前に、肩周りの理想的なアライメントについて確認しておきます。
肩周りのアライメント
全身に正しいアライメントがあるように、肩周りにも正しいアライメントというものがあります。
- 第2〜第7肋骨上にある
- 胸郭上に平坦
- 肩甲骨の内側縁は棘突起と平行
- 左右の肩甲骨の内側縁も平行
- 内側縁と棘突起の距離は男性約7cm、女性約5〜6cm
- 上腕骨上面にある大結節部は肩峰より少し外
- 肩の関節は内外旋中間位(変にねじれてないで真ん中)
- 両方の上腕骨は胸郭に平行
これだけ見てもわかりにくいので図にしてみました。
要するに変に上がっていたり下がっていたり傾いていたり、アンバランスじゃないってことです。
これが日常生活の癖などで肩周りの筋肉のバランスが崩れると、肩周りのアライメントも崩れてしまいます。
例えば、肩が上がったり(いかり肩)下がったり(なで肩)、肩甲骨が外に開いたり(猫背)してしまいます。
いかり肩
いかり肩では首から肩にかけての筋肉(僧帽筋上部、肩甲挙筋)が縮こまってしまっていて、肩甲骨が上に上がってしまいます。
逆に背中のあたりの筋肉(僧帽筋下部)は伸びてしまい筋力が低下してしまいます。
また、胸郭出口の1つである斜角筋隙(首と鎖骨の境あたりにある前斜角筋と中斜角筋の間)が狭くなるので胸郭出口症候群の症状の1つであるしびれが出てしまう可能性があります。
なで肩
なで肩では首から肩の筋肉(肩甲挙筋)、背中の上の方の筋肉(小菱形筋)が縮こまっていて、首から肩にかけてのもう1つの筋肉(僧帽筋上部)が伸びてしまっているため、肩甲骨が下がってしまいます。
また、肩甲骨が下がると鎖骨も下がるためその隙間(肋鎖間隙)を通る神経や血管を圧迫してしまい、胸郭出口症候群が起こる場合もあります。
肩こりといえど原因は様々
今まで見てきた通り、肩こりといっても様々な原因があります。
本態性肩こりも見逃せないのですが、特に注意したいのは症候性肩こりです。
ヘルニアや胸郭出口など、骨や筋肉が原因となる症候性肩こりは命に関わるような緊急性はありませんが、狭心症など内臓からの関連痛で起こる命に関わるような症候性肩こりがあることは覚えておく必要があります。
ただ、ほとんどの場合は鍼灸やマッサージなど血流の循環がよくなれば改善が期待できる本態性肩こりです。

しかし、思わぬ病気が潜んでいるかもしれないということを忘れないでください。
肩こりの悪循環
血行不良による肩こりはマッサージやストレッチをしたからといってすぐによくなるとは限りません。
それは、日常生活の癖があるからです。
- 足を組んで座る
- いつも同じ方の肩にカバンをかける
- 歯を食いしばる
- 座りっぱなし
- 立ちっぱなし
このようなちょっとしたことでも肩こりが起こってしまいます。
- 日常生活の癖など、悪い姿勢で使われる筋肉に偏りが出る
- 筋肉が硬くなる
- 血流が悪くなる
- 肩がこる
- 不快な痛みをかばう
- 1に戻る
悪循環のスタートはどこから始まるかはわかりません。
大切なのは、どこかで断ち切ること。
そのために鍼灸治療を受けたりマッサージを受けたりするのはいいと思います。
鍼灸など治療をし続ければ良くなる可能性もあります。
しかし、鍼灸やマッサージをしている僕が言うのもアレですが、本人が変わらないとなかなか変わりません。
例えば治療を継続していく中で、自分ではパソコンのモニターの位置を調整してみるとか、足を組まないようにして座るとか、そんなちょっとしたことでもいいんです。
また、僕がデスクワークの人によく伝えているのは「たまには立て」と言うことです。
理想は1時間に1回くらい立って背伸びをしたり肩を回したり、ちょっと動かせればいいのですが集中するとずっと座りっぱなしでパソコンカタカタなんてやってしまいますよね。

なので気づいたときやトイレに行くときなど、そのときだけでもいいのでちょっと動かしてみましょう。
あとはそうですね、やっぱり運動は定期的にした方がいいですよ。
そこに落ち着いちゃうのも短絡的で嫌なんですけどね、お許しください。
おわりに
さて、ここでもう一度見逃してはいけない肩こりのポイントをおさらいしておきましょう。
- 階段を上るなど運動したときに肩が痛む
- 手がしびれたり力が入らない
- 動かしていないのに痛む
- 症状がひどくなっている
これです。
このような症状がある場合はマッサージに行くのではなく、病院に行きましょう。
さて、久々に長々と書いてしまいました。
今回紹介したこと以外でも肩こりが起こる原因は様々あります。
普通とはちょっと違うかも、といったことがあればすぐにお近くの治療院や病院で相談してみましょう。
今回参考にした本をご紹介します。
この中でも特に「姿勢の教科書」はわかりやすいので施術者でなくてもオススメです。