
「睡眠が不足すると借金のように睡眠負債が溜まってしまう」
ということを聞いたことはありますか?
平日の残業続きで寝る時間が少なくなってしまい、睡眠不足を解消しようと休日にたくさん寝てしまっている人も多いかと思います。
しかし、残念ながら日頃蓄積された睡眠時間の不足は、休日にたくさん寝たからといってすぐに解消することはできません。
今回は慢性的な睡眠不足によって起こる身体への影響について考えていきたいと思います。
目次
睡眠負債は時間だけでなく質が悪くても溜まる
日々の睡眠時間の不足により借金のように負債が蓄積していってしまうことから「睡眠負債」と呼ばれていますが、睡眠負債は睡眠時間だけでなく睡眠の質も影響します。
いくら7時間の睡眠時間が確保できたとしても途中で何度も起きてしまったり、肥満などの影響で無呼吸状態が続いてしまうなど睡眠の質が悪いとしっかり眠れたとは言えませんよね。
睡眠負債を返済するには、ただ時間を確保できれば良いということではなく、睡眠の質も上げていかないとなかなか返済することは難しいでしょう。

睡眠不足が身体に与える影響
では、睡眠不足は身体にどのような影響を与えるのでしょうか。
- 体重増加の原因になる
- 糖尿病のリスクが上がる
- 思考力が低下する
- 風邪をひきやすくなる
- 高血圧のリスクを高める
今回は上記のことについて見ていこうと思います。
体重増加の原因になる
「睡眠が不足すると太る」という原因には
- グレリン
- レプチン
この2つのホルモンが関係していると言われています。
グレリンは主として胃内分泌細胞で産出され、摂食亢進や体重増加、消化管機能調節などエネルギー代謝調節に重要な作用を持ち、今まで知られている中で唯一の末梢で産出される摂食促進ペプチドである。
レプチンは、遺伝性肥満マウスの病因遺伝子の研究で発見された肥満遺伝子に由来するホルモンで、脂肪細胞より分泌され、主に視床下部の受容体を介して強力な摂食抑制やエネルギー消費亢進をもたらすことにより、その作用不足は肥満症の成因に収容な役割を有すると考えられている。

睡眠が不足することによってグレリンとレプチンの分泌は
- グレリン(食欲増進ホルモン)・・増える
- レプチン(食欲抑制ホルモン)・・減る
残念ながらこのような変化があると言われています。
とはいえ、睡眠不足によって太る原因はグレリンとレプチンだけではないかと思われます。
睡眠不足などのストレスで過食をしてしまったり、単純に長い時間起きているため食べる回数が多くなる、なんてことも考えられますよね。
しかし、このようなデータもあります。
健康な人でも一日10時間たっぷりと眠った日に比較して、寝不足(4時間睡眠)をたった二日間続けただけで食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌は減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大することがわかっています。

2日間でもグレリンとレプチンの分泌に変化があることから、グレリンとレプチンという2つのホルモンは「睡眠が不足すると太る」という原因の1つとして挙げられそうですね。
糖尿病のリスクが上がる
睡眠不足はインスリン抵抗性を高めると言われています。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。
- 血糖値が上がる
- 膵臓からインスリンが分泌される
- インスリンが細胞の受容体に結合し、細胞が血液中の糖を取り込む
- 余った糖は中性脂肪などとして蓄えられる
このようにインスリンには血液中の糖を細胞に取り込み、血糖値を下げる働きがあるのですが、睡眠不足によって正常に働かなくなってしまう可能性があります。

また、インスリン抵抗性が高まると、2型糖尿病になるリスクが上がってしまいます。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という血糖値を表す値があるのですが、HbA1cが6.5%だと糖尿病と言われています。
睡眠不足だけが原因ではないかもしれませんが、HbA1cが高い方は睡眠にも注意が必要です。
思考力が低下する
睡眠不足で頭の働きが悪くなる、というのは多くの方が経験していることかと思います。
しかし睡眠不足の影響はそれだけではなく、睡眠不足の状態が続いてしまうと脳の老廃物でもあるアミロイドβタンパクが溜まってしまい、アルツハイマー病にかかるリスクが上がると言われています。
起きている最中も脳の老廃物除去は行われているのですが、睡眠中はより多くの老廃物除去が行われています。
この脳の老廃物でもあるアミロイドβタンパクを綺麗にするためにも慢性的な睡眠不足は避けたいところですね。

風邪をひきやすくなる
睡眠中は成長ホルモンが分泌されます。
成長ホルモンはその名の通り身体を成長させる働きがあるのですが、大人になっても分泌はされていて、身体の修復や回復などのメンテナンスを行なっています。
睡眠不足によって成長ホルモンの働きが弱くなってしまうと身体のメンテナンスが上手くできず、免疫力が低下して風邪などの病気にかかりやすくなってしまいます。
また、風邪をひいているときには、身体はウイルスと戦うためにサイトカインという免疫に関わるタンパク質を分泌します。
風邪などで身体がだるくなったり眠くなったりするのは、身体がウイルスと戦っているからです。
戦っているのですから、身体は思っている以上にエネルギーを使っています。
そのときにしっかりと睡眠が取れないと、こじらせてしまう原因となってしまうので風邪をひいたらしっかりと休みましょう。

高血圧のリスクを高める
睡眠が不足すると交感神経が優位になり自律神経のバランスが崩れ、アドレナリンやノルアドレナリンも過剰に分泌されてしまうと言われています。
また、睡眠中は普通、血圧は下がります。
しかし、睡眠不足により血圧が下がる機会が減ってしまうと心臓にも負担をかけることに。
慢性的な睡眠不足では高血圧になるばかりか、循環器疾患のリスクも上げてしまうことになってしまいます。
睡眠負債を溜めないために普段からできること
睡眠不足による身体への悪影響を受けないためにも、日頃から睡眠時間をしっかり確保することが大切になってきます。
- 仕事よりも睡眠時間を優先する
- 夜遅くまでスマホなどの作業をしない
- 深酒しない
- メラトニンを増やす
まずはこのような4つのポイントを意識してみましょう。
おわりに
僕も朝方までパソコンで作業をすることがあるのですが、そういうときはなんだか心臓が疲れているような感覚を受けます。
徹夜で遊んだとき、身体の具合がおかしいと感じたことはありませんか?
どうやら1晩でも徹夜をすると拡張期血圧は10mmHgも上昇してしまうのだそうです。
おかしいわけですね。
徹夜とまではいかなくても、そのような状態が続いてしまうと身体には悪影響だ、ということは容易に想像できるかと思います。
身体のためでもありますが、仕事の効率を上げるためにも睡眠時間は優先して確保していきたいところですね。