
もしも街で1人でいる認知症の方を見かけたらあなたならどうしますか?
見て見ぬ振り?
それとも声をかけますか?
もちろん、パッと見ただけでは認知症かどうかはわからないためすぐに声はかけられませんよね。
ただ、「あれ、なんだか様子がおかしいな・・」と思ったときにどうするかです。
そんな万が一、認知症の方と遭遇したときのために認知症について一緒にお勉強していきましょう。
また、家族や周囲に認知症の方がいなくても認知症のことについて考えておくことは大切だと思います。
それは高齢化社会に突入して認知症の方に遭遇する可能性が増えるかもしれないということと、85歳以上の4人に1人は認知症になると言われているからです。

今回は「認知症サポーター養成講座」で学んできた認知症についての基本的な知識と、認知症サポーターについてお伝えしようと思います。
目次
65歳以上の7人に1人が認知症
認知症の方が日本にどのくらいいるのかご存知でしょうか?
我が国では高齢化の進展とともに、認知症の人数も増加しています。65歳以上の高齢者では平成24年度の時点で、7人に1人程度とされています。なお、認知症の前段階と考えられているMCIの人も加えると4人に1人の割合となりますが、MCIの方がすべて認知症になるわけではありません。また、年齢を重ねるほど発症する可能性が高まり、今後も認知症の人は増え続けると予想されています。

MCIの状態の方を含めると、なんと4人に1人もの方が認知症を抱えています。
今後、高齢化が進むと更に増えていくことが予想されます。
認知症の定義
では、認知症とは一体どんな状態のことを言うのでしょうか。
認知症というのは、様々な原因で脳の細胞が死んでしまったり萎縮することで脳の機能に不具合が生じてしまい、生活する上での支障が6ヶ月以上継続している状態のことを言います。
脳には何かを覚えたり考えたり、感情をコントロールしたりと様々な働きがありますよね。
この脳に障害が起こるため、記憶ができなくなったり家族のことを忘れてしまったり感情がコントロールできないなどの障害が起こるのです。
認知症を引き起こすのは主に4つの病気が原因と言われています。
- アルツハイマー病
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
- 脳血管性認知症
これらの他にもエイズやアルコール中毒、クロイツフェルト・ヤコブ病なども原因となります。
アルツハイマー病
アルツハイマー病は女性に多く、記憶障害や見当識障害、うつや妄想などの障害が早い段階から出現します。
アルツハイマー病ではβアミロイドやタウタンパクというタンパク質が脳に蓄積してしまい神経ネットワークが破壊されて様々な障害が起こります。
認知症のうち半分はこのアルツハイマー病が原因となり引き起こされます。
レビー小体型認知症
レビー小体型は症状の変動が大きいのが特徴です。
症状としては実際にはないものが見えたり、パーキンソン症状があげられます。
こちらもレビー小体というタンパク質が脳にたまってしまい、神経を侵すために認知症が起こる病気です。
認知症の中では3番目に多いと言われています。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は他の認知症と比べると若くに発症することが多い病気です。
物忘れなど記憶の障害よりも、社会性を失ってしまうような性格の変化が特徴となります。
他の認知症と違い物忘れなどがなく、「性格が変わってしまった」と思われて終わってしまうことが多いそうです。
もしも社会性を失うような性格の変化が見られた場合、前頭側頭型の認知症を疑ってみましょう。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は脳梗塞や脳動脈硬化などの影響で脳の細胞に栄養や酸素が行かなくなり、その部分の神経が破壊されてしまうために起こる認知症です。
こちらは認知症の中でも2番目に多くみられ、男性に多いのが特徴です。
また、壊れてしまった部分は回復できませんが、治療により回復する可能性がある認知症でもあります。
認知症の症状には大きく分けて2つある
認知症には大きく分けて中核症状と行動・心理症状があります。

中核症状とはその疾患の基本となる症状を表す言葉です。
では、認知症の場合はどのような中核症状があるのでしょうか、みていきましょう。
中核症状
ある疾患の基本的な症状。認知症の場合、記憶障害、見当識障害(時間・季節・場所の感覚、自分の年齢、人間関係がわからなくなる)、理解・判断力の障害、実行機能障害(計画を立てて実行できない、電気製品などをうまく操作できない)など。認知症の中核症状は、脳の細胞が壊れることによって直接起こる。
認知症の中核症状は薬で症状の進行を遅くすることはできますが、壊れた脳の細胞を復元することができないため回復することができません。
認知症の中核症状には
- 記憶障害
- 見当識障害
- 判断力障害
- 実行機能障害
- 失行
- 失認
- 失語
このような症状があります。
記憶障害
認知症の中核症状の1つ、記憶障害では新しい情報を記憶することができなくなってしまいます。
認知症がまだ進行していない状態だと昔のことは思い出すことができますが、認知症が進行すると昔の記憶も忘れていってしまいます。
歳を重ねると情報を覚えにくくなったり物忘れをすることが多くなりますが、認知症の記憶障害だと経験したこと自体を忘れてしまいます。
また、物忘れと認知症による記憶障害の違いは
加齢によるもの | 認知症によるもの |
昨日食べたものを忘れる | 食べたこと自体忘れる |
名前が思い出せなくなる | 誰なのかわからない |
約束を忘れる | 約束したこと自体忘れる |
曜日や日付を間違える | 月や季節を間違える |
このように認知症による記憶障害というのは経験したこと自体を忘れてしまうという特徴があります。
見当識障害
記憶障害と同じように認知症の早い段階からみられるのが見当識障害です。
この、現在の状況を把握することができなくなるのが見当識障害です。
時間の感覚が薄れてしまうため「今、何時なの?」と何回も聞いたり認知症が進行すると季節の感覚も薄くなってしまいます。
自分がどこにいるのかもわからなくなってしまうため自宅の近所でも道に迷ったり、かなり遠くの場所でも歩いて行こうとしたりします。
また、認知症がかなり進行すると身近な人と自分の関係性もわからなくなっていきます。
判断力障害
判断力の障害では、考えるスピードが遅くなったり理解することが遅くなるといった障害が出現します。
また、いつもと違う出来事が起こると混乱してしまったり、自動販売機や改札などの機械の使い方などが理解できなくなってしまいます。
実行機能障害
実行機能の障害が起こると、何かをするときに計画を立てたりすることができなくなります。
例えば料理の手順がわからなくなったり、食材もあることを忘れてしまっているため同じものを毎回買ってきてしまったりします。
また、頭の中で計画を立てることができなくなるため、予想外の出来事が起こると対処できなくなります。
失行、失認、失語
運動器に障害(麻痺など)がないのに日常で行う動作ができなくなることを失行と言います。
服を着たりお箸を使ったり、ずっとしてきたことが認知症によりできなくなります。
失認というのは感覚器の障害(視覚障害や聴覚障害)がないのに周囲の状況を把握することができない状態のことを言います。
失語では言葉を理解したり表現することが難しくなります。
行動・心理症状(BPSD)
認知症の中核症状に伴い出現する行動障害や心理症状のことを行動・心理症状(BPSD)と言います。
中核症状が出現すると今まで当たり前のようにできていたことができなくなったり、周囲の人が次第に誰かわからなくなってきます。
認知症は徐々に脳の細胞を破壊していきます。
次第に今までの自分ではなくなっていくということを想像してみてください。

認知症になってしまった本人にはかなりの不安や恐怖などのストレスがかかり、心理的にも追い込まれていきます。
そうすると今までの自分とのギャップに自信を失い、うつ状態になってしまうことも。
BPSDでは
- うつ状態
- 基本的な日常動作の支障
- 妄想
- 徘徊
などの症状があります。
認知症との向き合い方
認知症と向き合うのは本人だけでなく、周囲の人も一緒に向き合っていく必要があります。
また、家族内だけで抱え込まず、「あれ、最近様子がおかしいな」と思ったらすぐに専門の医療機関や地域包括センターなど周囲に相談することが大切です。
認知症が進行していない早い段階から専門家の人たちと関係性を築いておき、認知症に対する理解を少しずつ理解していけばその後の生活上の支障やトラブルにも対処できるようになります。
認知症の進行度合いにはかなり個人差があるため、その段階に応じた治療が必要になってきます。
この治療においても、早い段階から専門家に相談し関係性を築いておけば適切な治療を受けることが可能です。

認知症の人との接し方
「あれ、様子がおかしいな・・」と1番最初に感じるのは認知症になった本人です。
心配なのも不安なのも恐怖なのも全部、本人が1番感じています。
「自分が認知症なんて、そんなはずない・・」と認知症を否定する反応をすることもあります。
そのことを理解した上で
- 驚かせない
- 急がせない
- プライドを傷つけない
この3つのことを心がけて接しましょう。
見守る
認知症の疑いのある方を発見したらすぐに近づいたりずっと見たりせずに、まずはさりげなく見守りましょう。
こちらが焦らない
こちらが困っていたり焦っていたりすると相手は動揺してしまいます。
自分のできる範囲でいいので焦らずに対処しましょう。
声掛けは1人でする
複数人でいきなり声をかけると恐怖心をあおってしまいます。
なるべく1人で声をかけるようにしましょう。
後ろから声をかけない
突然声をかけられるとビックリしてしまいます。
まずはさりげなく「何かお困りですか?」と聞いてみましょう。
目線を合わせて話す
目線の高さを同じにして話すと恐怖心をあおりにくくなります。
ゆっくり、はっきり話す
高齢者は耳が遠くなっている方も多いので、できるだけはっきりと話すようにしますが、威圧的にならないように気をつけましょう。
しっかり話を聞く
認知症になると言葉を表現するのが遅くなります。
急かさずにゆっくりと話しを聞きましょう。
認知症サポーターになって認知症を理解しよう
認知症は家族だけの問題にせず、地域で見守ることが大切です。
もちろん過度な介入はしなくても良いのですが、介護をする家族は余裕がなくなったり介護疲れから身体を壊してしまうこともあります。
認知症の方を見守るためには、まずは今後増えていくであろう認知症に対する知識をつけておくことが大切です。
特別なことをするわけではないけど、認知症について理解していて認知症の方やその家族を応援するのが認知症サポーターです。

とくに認知症サポーターにはなにかをとくべつにやってもらうものではありません。認知症を正しく理解してもらい、認知症の人や家族を温かく見守る応援者になってもらいます。そのうえで、自分のできる範囲で活動できればいいのです。たとえば、友人や家族にその知識を伝える、認知症になった人や家族の気持ちを理解するよう努める、隣人あるいは商店・交通機関等、まちで働く人として、できる範囲で手助けをする、など活動内容は人それぞれです。
写真のオレンジリングはサポーター養成講座を受けるともらえるものです。
今回のこの記事も、サポーター養成講座を受けたから書けたものですし、それまで僕は認知症についてあまり知識を持っていませんでした。
しかし、このサポーター養成講座を受けて、近くに認知症の方や認知症に関わっている友人がいなくても認知症について考えておくべき必要があるなと思いました。
自分が認知症になるかもしれませんし、両親がなるかもしれない、奥さんがなるかもしれない、誰でも認知症になる可能性があります。
認知症の予防のために食事に気をつけたり適度に運動したりすることは大切ですが、それでも認知症になる可能性は0にはできません。
今回、初めて認知症について詳しく教えてもらい、今から少しずつ周囲の人と認知症について話し合っていくことが大切なのではないでしょうか。
おわりに
認知症サポーター養成講座は地域包括センターや学校でも無料で受けることができます。
まずはあなたの住んでいる地域包括センターに問い合わせてみてください。
医学的知識はもちろん必要ありませんし、ハードルの高い講座ではありません。
是非、お気軽に受けてみて欲しいなと思います。